気密性・断熱性が高い注文住宅とは?見極め方のポイントを知ろう

公開日:2022/04/15  最終更新日:2022/04/08


家づくりについて調べていると、「気密性」・「断熱性」という単語がよく出てきます。一体、何なのでしょうか。この2つ、実は快適な家づくりに欠かせないものです。今回は、そんな気密性と断熱性について詳しくお伝えします。C値や住宅省エネ基準についても分かりやすく解説しますよ。体にも環境にも優しい家を建てたい人は、ご一読ください。

気密性が高い家とは?

気密性とは、内部の空気が外部に漏れない性質のことです。容器などを隙間のないようにぴったりと閉めることで、空気の出入りを抑え、気密性を高められます。つまり、気密性の高い家とは、室内と室外との空気の出入りが少ない家のこと。高気密の家であれば、室内の空気が室外に漏れづらく、室外の空気が室内に流れ込みにくいです。

■気密性の高い家のメリット

気密性の高い家のメリットを3つ、紹介します。

1つ目は、室温を一定に保ちやすく、快適な室内環境を実現できることです。気密性の高い家は室内外の空気の出入りが少なく、外気の影響を受けにくいため、室温をコントロールしやすいのです。冬の寒さや夏の暑さに左右されることなく、1年中、快適に過ごせますよ。さらに高気密の家は部屋ごとの室温の差が小さいため、部屋を移動する際の体の負担も少ないです。急激な温度変化によって血圧が上下すると、心臓や血管に負担がかかります。これをヒートショックといいますが、高気密の家はこのヒートショックの予防にもつながるといわれています。

2つ目は、湿度がコントロールしやすいことです。梅雨時期のジメジメ、悩ましいですよね。高気密の家であれば、屋外からの湿気の侵入を防げます。人が快適に過ごせる湿度は約40~60%。梅雨時期のカビやダニの繁殖を抑えられ、さらに寒い季節には結露もできにくくなりますよ。その結果、建物の劣化も防げるのです。

3つ目は、省エネルギーであることです。気密性の高い部屋は空調の空気が効率的に部屋全体にゆきわたり、冷暖房が効きやすくなります。省エネであるということは、光熱費を節約できるということ。環境にも優しいうえに、お財布にも優しいうれしいポイント満載です。ほかにも、花粉・砂ぼこり・害虫など、不快なものをシャットアウトできることも大きなメリットといえるでしょう。

■気密性が高い家は息苦しい?

気密性が高いと、空気がこもって息苦しいのではないかと心配に思う人もいるかもしれません。しかし、そのような心配はいりませんよ!

なぜなら、高気密住宅は換気扇などで24時間換気することが義務付けられているからです。気密性が高いほど、換気は効率的に行えます。そのため、高気密の家は、室温を適温に維持しつつ、同時に空気も入れ替えることができる快適な家なのです。

■気密性を表す数値「C値」

ここまでで気密性の大切さは理解していただけたかと思います。しかし、気密性は家のデザインのように目に見えるものではないため、何を基準にすればいいのか分かりづらいですよね。そんなときは、気密性を表す「C値」に着目してみてください。

C値とは、隙間相当面積のことを指し、隙間の合計面積(平方センチメートル)/家全体の延床面積(平方メートル)から算出されます。たとえば、建物の延床面積が100平方メートルで、家全体の隙間の総量が50平方センチメートルであった場合は、C値は50/100=0.5です。C値は現場で測定することで得られる数値で、通常、施工途中と完成時に測定されます。このC値は、値が小さいほど気密性が高いといえます。

現在、日本ではC値の基準値は定められていませんが、カナダでは0.9、スウェーデンでは0.6~0.7以下と定められているようです。C値と家のつくりとの関係ですが、1.0未満であれば、気密性が高く、省エネ効果・遮音効果も期待できる家であると考えられ、0.5未満であれば、省エネ効果だけでなく、花粉・害虫などの侵入もほとんどないと考えられています。

■C値の注意点

気密性を判断するのに重要なC値ですが、注意点があります。C値は経年劣化するものだということです。窓・ドアの開閉や建材の収縮などによって隙間の面積が少しずつ増えることで、C値は自然と劣化します。これは生活すると必ず起こる変化なので仕方ないものです。

C値の劣化は新築から最初の2年で進み、その後は安定すると考えられています。そのため、新築時点で小さいC値が実現できれば、その後も長く快適に高気密な家で過ごせると考えられるでしょう。

断熱性が高い家とは?

断熱性が高いとは、熱を遮断する性能が高いということです。建物の外壁や内壁に断熱材を入れたり、窓に複層ガラスを用いたりすることで、外気温の影響を遮断します。断熱性は気密性と密接に関係しています。

なぜなら、いくら断熱性を高めても気密性が低くければ、屋外の空気が室内に流れ込んでしまううえ、いくら気密性を高めても断熱性が低くければ、室温は外気の影響を受けてしまうからです。気密性と断熱性はセットで取り入れられるからこそ、効果が高められるものなのです。

■Q値

断熱性の高いかを判断する数値が2つあります。Q値とUA値です。それぞれ詳しく解説します。

まず、Q値とは、熱損失係数といって、どれほどの熱が屋外に逃げていくのかを算出したものです。建物内部から逃げる総熱量を延床面積で割ってもとめます。

このQ値は、数値が低いほど断熱性が高く、数値が高いほど断熱性が低いです。そんな断熱性を示すQ値ですが、弱点があります。それは、延床面積が大きいほどQ値が小さくなる点です。これでは延床面積が大きいだけで、性能が高く評価されてしまいます。そのため、現在は、Q値は断熱性を表す正確な値とは考えられていません。

■UA値

そんなQ値の弱点を克服した値がUA値です。UA値とは、Q値と同じく、熱損失係数で、どれくらいの熱量が外に逃げているかを表した数値です。

しかし、延床面積を用いて算出するQ値とは異なり、UA値は家全体の外部に面している面積(外皮面積)と、屋根・天井・壁・窓・換気などから逃げる熱量を用いて算出します。そのため、UA値は、Q値よりも正確に屋外にどれほど熱が逃げているか表せるのです。UA値が低いほど断熱性能が高く、UA値が高いほど断熱性が低いです。

■UA値を用いた住宅省エネ基準

UA値は、現在、住宅省エネの評価基準として採用されています。UA値の基準には、政府が定める「省エネルギー基準」や、「ZEH基準」「HEAT20基準」などがあります。基準は地域ごとの気候や環境の違いを踏まえて設定されているようです。

ZEHはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、断熱性の高い家であることはもちろん、高効率給湯器やLED照明を使った省エネ対策や、太陽光発電などを使った創エネ対策を行うことで年間のエネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指す住宅を指します。

政府は、「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」とする政策目標を設定しており、多くのハウスメーカーや工務店が取り組んでいます。

HEAT20とは「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」の略称で、2009年に研究者や住宅建築に関わる団体の有志で発足された団体です。

2020年を見据え、住宅の高断熱化・技術開発・高断熱住宅の普及をしています。HEAT20による基準は、省エネルギー基準やZEH基準よりも厳しく設定されているので、HEAT20基準を満たせば、断熱性が非常に高い家であると判断できます。

注文住宅メーカーは上記2点を考えたうえで選ぼう

気密性・断熱性が高いことは、快適な住まいの実現に欠かせないポイントであることが理解していただけたでしょうか。注文住宅を建てるなら、ぜひ気密性と断熱性に注目してくださいね。

では、ここからメーカー選びのポイントをお伝えします。

■施工実績が豊富な会社を選ぶ

施工実績が豊富かをチェックしましょう。気密性の高い家を建てるためには、建材と建材の間に隙間ができないように専用のテープやシートを施工したり、寸法の誤差なく建材を組み立てたりするなど、高い技術力が必要です。同じ建材や設計で建てられた家であっても、職人の技術によって家の仕上がりはまったく異なります。そのため、豊富な実績でその技術力が保証されている会社を選ぶことをおすすめします。

■C値とUA値をチェック

気密性と断熱性は、家のデザインのように目に見えるものではないため、何を基準にすればいいのか分かりづらいものです。そんなときはぜひ、C値(気密性)とUA値(断熱性)をチェックしてみてください。家を建てる際にしっかり値を算出したいのなら、希望の値について事前に相談しましょう。気密測定を行うことを契約書に記載してもらうのもおすすめですよ。

 

近年、省エネで快適な住まいを求めて、多くの人が高気密・高断熱な家づくりに着目しています。高気密・高断熱な家は、室内の空気環境を整えやすく、体にも環境にもお財布にも優しい住まいです。C値やUA値は、気密性や断熱性を評価する基準になります。今回を紹介した住宅省エネ基準をチェックしながら、ハウスメーカーを比較検討してみてくださいね。

おすすめ関連記事